うわ~~早いな!もうこんなに経ってた。別に何してたわけじゃないんですけどもね。


あ、巡礼の新公とカルトワインには行ってましたね。レポはまた改めて。


新公はいつも最終バスに間に合わないので泊まりになるんですけどね、今またちょっとホテルジプシーになってます。


以前、ゲストハウスのススメ、みたいなブログを書いたこともありましたけど、最近はほとんど個室ですね。
4泊とかしなきゃいけないときはゲストハウスに渋々行きますけども、2泊までなら個室を選ぶ感じですね~。


なぜなら、ババアになるといろいろ皮膚も弱ってきてお風呂あがりにいろんなものを塗りたくっては手を洗いに行き、塗っては洗い塗っては洗いをするので、大部屋を何度も出たり入ったりしなきゃいけなくて、ドアの開閉音で他の皆さんに迷惑だろうな~ということでね。


個室なら寝間着もいらんし目覚まし音も最小にしなくていいし、夜中に煎餅ボリボリしてもいいし、千円くらいの差なら個室に、という感じになってきています。


関西なら、谷町線の谷町4丁目駅にアパがあるんですけど、すごく古いアパなので価格も安く、平日で1泊3000円くらい。
ただやっぱりアパと言えどもユニットバスとかもすごく古いので、正直、清潔感には欠けるかな。施設が古いと排水も悪いしね。洗面台が全然流れない…


でも徒歩で大阪城に行ける立地というのがセリ美にとって高加点なのでまぁしょうがないかな、というところ。
史跡巡りマニアとしてね。




んで、同価格帯でどこかいいところないかな~って思ってる時にヅカ友さんから「十三のほうにいいところあるよ」と教えてもらい、心中するときにはそこ行ってきます。
良かったらまた報告しますね。



そういえば最近はヅカ友さんたちとのLINEで


「来月って東京来るの~?」
「来月は心中なんだよね~」
「あ、心中か!いつ心中するの?」
「一応25日の心中希望出してる!」
「無事に心中できるといいねえ」


なんて会話が繰り広げられてますが、画面だけ見たら大変物騒な会話ですよねえ。
無事に心中できますよーーーに。




ちなみに東京でも最近はアパが多く、雷門前のアパが都内では最安かなと思います。4500円くらい。アパはポイント還元をうまく使うと割引率がいいですし。お水くれるし。
たまに試供品の配布日もあったりして、セリ美はお酒が飲めないので関係ありませんがビールの新商品を無料で配ってたり、マウスウォッシュとか歯みがきチューブとかもらえるとラッキー。
たまにアパカレーももらえます。


そういえばこの前、谷町のアパでトイレが汚れていて、フロントに言って部屋を変えてもらったらサービスでダブルの部屋にしてくれて、そういうホスピタリティがやっぱりアパいいなーと思いますね。
お水2本置いてあった!
遠征先では飲み物にお金を使わないという強い信念で動いているので、お水は大変ありがたいです。


ちなみに、ホテルのトイレってけっこう高確率で掃除が行き届いてないので、皆さんも滞在先ではトイレやシャワーに入る前にじっくり観察したほうがいいですよ。
天下のアパさんでもこうして掃除ミスがありますのでね。

特に見過ごしがちなのが、男性はトイレを立ってするので、便器近くの壁には触らないほうがいいですね。
以前にトイレ横の壁の
足元に引っかけてあった汚物入れ袋を取ろうと思ったらその周辺に尿ハネがびっしりあって、あまりに気持ち悪いのでフロントに報告して他の部屋に変えてもらったことがあったんですが、なんとセリ美はそれでクレーマー扱いされ、ブラックリストに入れられてしまい、もう予約できなくなっていました……

「壁までチェックして文句言うな」ってことなのでしょうから、とにかく余計なところには触らないで、汚物入れは自分で持ってるレジ袋とかを利用するようにしてます。


でも便座とか洗面台の蛇口とかドアノブとかリモコンとか、素肌が触れてしまうところはできるだけアルコールスプレーやウェットティッシュで一回拭いてから使うことを心がけています。

最近はホテルに除菌スプレーが置いてあることが多いので、それをシュッとしてトレペで拭いて流せばオッケー。



ホテル清掃ってとにかく時間との勝負ですし、清掃スタッフによっては客が使った使用済みのバスタオル1枚でトイレから洗面台から全部拭き上げるだけで済ます人とかもいるそうですのでね。
社員さんも毎日いちいち清掃スタッフの作業チェックなんてできないでしょうしね。



あ、備え付けのコップとか使っちゃダメですよ!
あんなのも全部バスタブやトイレと同じタオルで拭いてるだけですからね!
セリ美は100均で売ってるシリコン製の折りたたみコップを持ち歩いております。

なんなら電気ケトルとかも、変な使い方してる人もいるそうなのであまり使わないほうがよろしいかと。
スリッパは最近使い捨てを置いてくれてるところも多いですけど、ペラペラで履きにくいし、そもそも置いていないところもあるのでできるだけ携帯用スリッパを持って行きましょう。

ホテルの備品はとにかくできるだけ触らず使わず!が無難です。

バスタブもきっと洗剤なんか使って洗ってないですから、あんまりお湯溜めて入らないほうがいいかなと思いますね。



東京ではアパ以外にも、シーズンによってはゲストハウスの中の個室のほうが安いときもあるので、ここを使うことも多いです。
安い時で2500円とか。


https://andhostel.jp/asakusakappabashi/


もちろん個室内にトイレもシャワーも洗面もあるので、普通のビジネスホテルとさほど変わりませんが、業態としてはゲストハウスなのでチェックインが23時までとか連泊でも清掃やタオル交換は無いとか多少の制約はあります。



ホテル比較サイトも基本的にはブッキングドットコムを使うことが多いんですが、YahooトラベルはYahooポイントが1000ポイント以上つくタイミングだといちばん安いこともありますし、タイミングによって最安値は変わってきますね。
楽天も然り。



面倒だけど、予約時に複数の予約サイトを見て回って比較したほうがいいです。



こんなに必死になって節約してるヅカファンも少ないから「100円でも安く!」みたいな人はあんまりいないかな。。。


でもさ、そうやってコツコツ節約した分でヅカ友さんとお茶したりランチしたりできるし、チケットでお世話になってる人にお礼の煎餅買ったりできるもんね。

その煎餅だってやっぱり美味しいものを差し上げたいから、自分で試食するためにいろいろ買って試さないとオススメもできないもんね。


と言い訳しつつ今日も新作煎餅に手を出します。




あ、これ美味しいよ!
特にチーズ味とエビ味がセリ美は好きです!
ここのお店は味が選べるのでオススメー!

もちろん榮太郎さんの店舗でも買えると思います!







とある方にお礼品で頂いたんだけど、なにやらOGさんが関係している銘柄だそうなので、そういう意味でもぜひ食べていきたいなと思っています!!


今は天下の榮太郎さんが販売してるけど、元は「銀座江戸一」さんという老舗のお煎餅屋さんが作ったお煎餅でして、でも後継者がいなかったのか、1997年に銀座江戸一さんは廃業しちゃって、この名品のレシピを絶やしてはいけない!ということで榮太郎さんがレシピごと受け継いで販売してくれています!!


お煎餅はキメが細かくてさくさくと軽い食感で、小袋だから食べすぎちゃわないし、おやつやおつまみにちょうどいいですよ~。




こういう煎餅マニアとしても活動しておりますのでね、とにかく無駄なお金を一切排除するために、宿泊代や交通費などは必死でケチっているセリ美で御座います。







さてまた相変わらずアイドリングトークが長くなっておりますが、バイオームレポ後半にまいりましょう。





幼なじみのケイと一緒に毎晩クロマツの木に集まって、この木にしか停まらないフクロウを待っていたルイ。

でもそこに、お屋敷に住んでいる大人たちが次々にやってきて、ルイは大人たちの会話を聞いてしまいます。


自分は頭の病気なんだ。
自分はいらない子なんだ。
自分はもうすぐ捨てられる。
ケイは存在しないんだ。
ママは野口さんとキスしてた。


もう何も聞きたくない、頭の中に響く全部の声が聴こえなくなれ!ケイなんか存在しないんだからケイの声も聴こえなくなれ!!!

と、持っていたリコーダーを弱々しく吹いて悲しさを塗りつぶそうとするルイ。

そのルイを見つめ、リコーダーの音に同調して歌う植物たち。

ルイはそのままそこで眠ってしまいます。






台風一過の翌朝。


「ふんふんふん~~♪」とゴキゲンな野口がお屋敷の玄関に飾ってある盆栽をクロマツの根本に運んできます。
ちなみに盆栽役は、克人役の野添義弘さんです。いま鎌倉殿の13人で、安達役でご活躍されていますね。

バイオーム中はまだ大河の撮影中だろうに、同時進行でこんなしんどい仕事もこなすんだからほんとに役者さんってスゴイ。


盆栽は結構おちゃめなキャラクターです。
野添さん、克人のときはすごい威圧的な威厳を放っていたのに急にコミカルな盆栽になっちゃうんですからねえ。野口の押す台車に乗せられて可愛く登場します。



クロマツの松ぼっくりから芽を出したこの盆栽を、たまにこうして親の近くに持って来てやると元気になるんだと、野口は先代の父から教えてもらっていたそうな。


憧れの怜子とついに結ばれたことで野口はもう夢見心地です。


そこに、更に元気な声。

「おはようございます~~!」

歪んだこの一家の嵐の夜の動乱に似合わぬ爽やかなテンションで現れるともえ。
今日も怜子のフラワーセラピーを行うためにやってきました。


植物の力を借りるセラピストと、庭師の野口。
共通の話題も多く、盛り上がっていたところに学が現れます。


野口からしてみると、学は怜子を愛さないムカつく恋敵野郎。使用人としての笑顔を無理やり貼り付けますが、学から自分の顔が見えなくなった途端に恨みの表情に一転して、その表現が非常に巧みでしたね~。

野口役の古川雄大さん、ミュージカル界では有名な方なのだと思いますがセリ美は多分初見でして、「男性舞台人アレルギー」を持っているセリ美もこの古川さんにはまったくアレルギー反応が出ずに、びっくりしました。
ストレートプレイだからかなあ?

でもいかにもダンサーの筋肉・動き方で、お顔立ちも正統派美形、こりゃあ~さぞかし人気だろうな~ということは一目瞭然でした。

今回はダンスも歌も無く、芝居力のみでの表現ということになりましたが、めちゃめちゃ巧かったです。




「あんなに素敵な怜子さんを不幸にしやがって…」という憎悪の視線を瞳の奥にたたえながら学の荷物を運んでいく野口。


すると、学を追いかけて怜子が現れます。

もう、ゾンビですよ。あの華麗なるおハナ様が「んま、ま、待ちなさいよおおおおおお~~」とフラフラで現れ、学の襟元を掴んで離さない。


さっきお屋敷でお昼ご飯にとんかつを食べていた時に学が「ルイは施設に行かせることにした」と勝手に決めてしまったことに納得できず、ここまで追いかけてきた怜子。


「うははははは!お昼ごはん食べながら、とんかつ食べながら、『あの子は施設に入れることにした。以上。』ってwww キャベツにソースかけながら!うはははははは!!あなたTPOどうかしてるわwwwwwww 霞が関って…そんなんなのよねえ?とんかつ食べながらどっかの国と戦争しよう~とか、あの思想犯は処刑してしまえ~とか決めてるんでしょ?wwwwwうははははははは!!!」


これがおハナさまですよ…?
ケタケタ笑いながら学の襟元掴んでクマだらけの腫れた目で草生やしまくってる。


「つまんない国ねえええ~wwww あなたたちはただ立場を維持しておくためだけに、何時間も何時間も、おんんんなじくだらない質問ばかりしてる議会かなんかで、うたた寝して、実際にはほとんど何もせずにただ数で群れて、人と表向き仲良くしてるのが仕事なんだものねえええ~wwwwwwww はぁぁぁ~民主主義ってすごいわあああああ~~人と群れることができる小物たちほど力を持つことができるんだけどそれがまたうまくいってるんだからwwww 仕事って言ったらたまにゼネコンのために口きいて、賄賂もらうくらいでね~wwwきゃははははは!!!!」



いや~~なんかくーみんの思想が丸出しっていうか…(笑)

政治と宗教に関しては正解の意見って無いのであまり論じないようにしてるんですが、政治家の無能さってのはやっぱりさすがに感じることが多くなってきましたね。
バブル景気になって政治家もめちゃくちゃお金持てるようになって、バブル弾けてからじわじわと少しずつ無能さが増長しているような気がします。

本当にこの日本という国を豊かな国にしようという気があるんでしょうか…?と思うほど、真面目に働いてる人ほど損をするような仕組みにどんどんなっちゃってね。


この前の、自治体が4千万円を間違えて振り込んじゃった事件も、その4千万円をそっくりそのままオンラインカジノにぶっこんでるような人間に生活保護が支給されてて、真面目に頑張ってる国民たちは働けども働けども給料の多くを税金やら年金に持ってかれちゃって。
将来、自分たちに年金なんてきっともらえやしないのに。


いま国内に全然お金が無くて円の価値もどんどん下がってみんなヒィヒィ言ってんのになぜか外国に支援金とかバンバン払っちゃうしね。
支援も大事だけど、まずは自国民の安定を第一に考えてほしいのにねえ。


政治家なんてどうしようもない、みたいなこのおハナさまの台詞、時代が時代なら、こんな台詞を劇中にぶち込んだらくーみんは「国家反逆罪」とかになって投獄されちゃいますねえ。相変わらずロックだわ~~




でも、たいして愛してもいない息子なのに施設に入れることをなぜこんなに反対するのでしょうかねえ。

「そんな風にルイを処刑するのね!!」とかってキーキー叫んでるくせに、ゆうべ嵐の中で眠って風邪を引いて寝込んでしまったルイが寝言で「パパ、パパ…」って言ってるんだからこんな時ぐらい出かけないでそばにいてやりなさいよ!とかって結局ルイの精神的看病を学に依存しててね。



それでも出かけようとする学を「絶対に行かせてなるものか!!」と離さない怜子。

「なぜそんなに行かせたくないんだ!」と問い詰めると、「自分だけこの家の地獄から逃げるなんてズルい!!!あなたも私と一緒に、この家の最低な気分を味わってなさいよ!!!」という「死なばもろとも」理論だそうです。


この勢いで怜子は学が浮気していることも知っている、と暴露します。
いまここにともえも野口もいるのに、堂々たる暴露です!

だから私も浮気して誰の子かわかんない子妊娠してやるんだから!!と言い放ちますが、もう既にそれは実行済みという恐ろしさ。ひえええええ…




そこまで言われて学もついに本音をぶちまけます。

「あの子がおかしいのは、母親であるキミのせいでもあるんじゃないのか!!!」と。

母親があの子をまともに愛してあげないから、母親のお前がそうやって情緒が不安定だからあの子はどんどんおかしくなっていってる、と。だからあの子をキミから引き離すためにも施設に行かせることにしたんだ、と。


そうハッキリ断言されて怜子はついに絶句します。
あの子がおかしいのは自分のせいなのか…と。


その隙に出かけていく学。



あまりに込み入った状況に巻き込まれ、ともえは今日はもうセラピーはやめておきましょう、と帰ろうとしますが、絶対にそうはさせない怜子。
こんな時こそセラピーが必要なんじゃないの!お願い私を見捨てないで!とすがりつかれ、仕方なくともえはまた植物の葉をむしって入れた水を飲んだりする妙なセラピーを始めます。

その水を飲んでプラシーボ効果が発揮されてしまったのか、自分の本音をぶちまけ始める怜子。


みんな私のことをお金持ちでなんでも手に入って羨ましいと言うけれど、何をしてても虚しくて意味が感じられなくて、どんなに高価な家や車を持ってても、しょっちゅうリゾート地に行って高いもの食べたって、それを美味しいとも美しいとも嬉しいとも思わないし、有名な政治家の娘で妻でみんなに注目されていいわねって言われるけど、そんなに羨ましいならいつでも代わってあげる!!と。

どうせ政治家なんて意味のないことを大そうなふりしてやったり、意味があるって信じ込んでてゾッとする。どうせみんなが欲しいものなんて要はお金で、欲が満たされればそれで満足なんでしょ?そんなことのためにあくせく働いたり嘘のスローガンかかげて選挙したり、みんなバカみたい!!!!と。


しかし、この恨み言がともえの感情に火をつけます。

感情的になるなんてセラピストとしてはやっちゃいけないことなんでしょうけど、そこがエセセラピストだから徹底できないわけですね。



ともえはシングルマザーでとにかくお金が無い。
子育てしやすい政策を政治家が作ってくれることはとても意味のあることだし、シングルマザーをもっと支援する国にしてほしい。そういう大切な政治家の仕事を「くだらない!」と言っている怜子。
ともえはお金を稼ぐためならこんな怪しい商売だっていとわない。
自分の愛する子供に新しい洋服を買ってやりたい、いい教育をしてあげたい、その一心でこうして変な金持ちマダムのくだらない戯言を聞きに来てるのに、金持ちマダムの中2病みたいな甘えを聞かされて「自分で稼いだことも無いお前がふざけたこと言ってんじゃねえ!!!甘えんな!!!」ってなところですね。


しかし、お金に困ったことのない怜子にはその感覚が全く理解できない。
ただ生きてくために必死に働いて人生を終えて、それに何の意味があるの?と。


大好きで愛しい家族と笑って過ごすために毎日一生懸命がんばることが生きる意味だと言うともえですが、「大好きで愛しい家族」がいない怜子には、どんなに説明されても生きる意味が理解できない。


時間もお金もたっぷり余裕がある人生が与えられたなら、困ってる人を助けるとか、恵まれたあなたにしかできない、意味のあることをやればいいじゃないですか!と反論してくるともえに、「だから、意味のあることが何なのか分からないって言ってるじゃない!!!!」とエスカレートしていく怜子。


「まぁ不労所得の無い人は働くことで忙しいんだろうから、こういう人生の真理に気付かなくていいわね」とまで言い出す怜子に、もう我慢できないともえ。


そんなに無意味な命なら早く捨てちゃって、そんなに無意味でいらないお金なら私に恵んでよ!!!と叫びます。






これはね、両者とも正論なんだよな…と思っちゃいますね。


セリ美の環境はどちらかと言えば怜子寄りだったので(こんなに金持ちではないけども)、お金も物も与えられたけど、肝心の愛情を与えられなかったので、「何のために生きてるの?」と虚しくなる気持ちもよ~~~~~っく解ります。

高いレストランにも何度も連れて行かれたけど、完璧に立ち振る舞えるか監視されてるような状況で、どんなに貴重なお肉やお寿司を食べても何も感じない。
旅行にもいろいろ連れて行かれたけど、そこでも24時間監視され続け、母の意にそぐわないことをすれば人前で何度も怒鳴られ叩かれ。
デパートで高い洋服もずいぶん買い与えられたけど、どれも自分が選んだものじゃないから何も嬉しくない。

「お母さん、美人で社長さんで羨ましいなあ」と何度も言われたけど、怜子の台詞そっくりそのまま「いつでも代わってあげるよ…」って思ってました。
お金なんて、美貌なんて無くていいから、普通の優しいお母さんが只々欲しかったです。


そしてようやく実家を捨てた今はとても平和で友達にも恵まれて楽しい人生だけど、「老後資金2000万必要とか言われてるけど冗談じゃねえよ…電気代2倍とか言ってるし…玉ねぎ高いし…野垂れ死にすんのかな…」という不安もよ~~~く解ります。

遠征に握り飯4個と水2リットル背負って毎回出かける貧乏人セリ美には、ともえの「お金で解決できることがほとんど」という気持ち、よ~~~く解ります。



お金だけ与えられた怜子と、お金だけが足りないともえ。

こんな真逆の環境なら、そりゃ本音が出たら相容れなくなりますわね。




「そんなにいらないなら命もお金も捨てればいいじゃない!」とまで言われて、もう見ていられなくなった野口が割って入ります。
セラピー代金を無理やりともえに握らせ、今日は帰ってくれと詰め寄ります。
そのお金をバッグに押し込んで走り去るともえ。


学に「ルイはお前のせいでおかしくなってる」と言われ絶句、ともえに「そんなにいらない命もお金も早く捨てれば」と言われ絶句。
全部自分のせいなの…?と行き場を失った怜子は暴れることしかできなくなり、コップを投げ捨て、テーブルを倒し、椅子を投げつけ、盆栽を倒し、枝を折ります。


それでも暴れ足りず、クロマツに目を向ける。

自分の人生をこんなにしたあの忌まわしい父親が自慢にしている、このクロマツ。
このクロマツのところに毎晩毎晩やってきて大人たちに障がい者扱いされてしまったルイ。
なぜ母親の私のところに来ないでこんなクロマツのところに来るのか。

このクロマツが元凶なのでは…と思い始め、八つ当たりがクロマツに向く。


「ねえ…このクロマツ…切っちゃおうよ…」


と野口にけしかける。
さすがにそれはできない、と最初は拒む野口ですが、惚れた弱みですかね~怜子の命令に逆らえず、樹齢何百年のクロマツをついにチェーンソーで切り倒してしまいます……


切られてしまいそうになっているクロマツに、子の盆栽が

「お母さんを助けてあげたいけど、僕も…もう…力が…」

と話しかけますが、さっき怜子から倒され、枝を折られ、盆栽ももう力尽きてしまいました。



野口ってドMですよねえ~。

怜子が野口に優しくしたことなんて一度だってないはずだし、怜子の高圧的で傲慢な態度も知ってるはずなのになんでこんなに惚れてるのかさっぱり分からん…

暴れる怜子を見ていられなくなった野口は、「2人でここから逃げよう!」と怜子の手を取りますが、逃げようと言い終わらないうちに「勘違いすんな馬鹿!」と怜子に引っぱたかれてますしね(笑)
お前とゆうべ寝てやったのはお前のことが好きだからなわけねえだろうが!!ということですね。お前みたいな立場の低い庭師のことなんか好きになるわけないだろ!!と。

お前なんか学へのあてつけに利用しただけなのに自惚れんなクソが!とまで言われてんのに、怜子のことが好きでしょうがない野口のドMぶりはなかなかですね。




そしてついに元凶のクロマツを切ってやった!と満足しているところに現れる、ふき。

「こ、こ、これは一体……」

と呆然とします。


「使用人は感情を一切出さずに仕えるべき」という強い信念をもって仕事にあたっているふきもこれにはついに堪忍袋の緒が切れます。


「いい加減になさい!!!いい歳をして!!!あなたがそんな風だからお坊ちゃまもあんな風に…!!」と怜子を怒鳴ると、怜子はまたケタケタと笑い始めます。


「ついに言った!!!ついに本性を出したわね~~!!!wwwwww」


施設に入れられてしまうルイをかばい、自分がしっかりお世話すればお坊ちゃまもきっとまともに…とまで言っていたふきでも、やっぱり本心は「お坊ちゃまもあんな風に」と思っていたんじゃないか!ついに言ったな!と笑う怜子。


怜子のあまりの狂いようにふきは「こりゃもうあかん!」と怜子を精神科に連れて行くことを決めますが、怜子は自分はまともだと思い込んでいる。
ふきは息子である野口に怜子の保険証とバッグをお屋敷まで取りに行かせます。

なんとか怜子を捕まえて今から医者に…と追いかけまわしているところに、屋敷に誰もいないことに不安になったルイが庭に出て来てしまいます。



なんでばあやがママを追いかけてるんだろう…??



ついにふきに捕まった怜子は、ふきへの怒りをぶつけ始めます。

使用人は感情を一切出さずに仕事に徹するべきと言いながら、いつもふきは威圧的な目で怜子を監視し、怜子をコントロールしようとしていたことに怜子はずっと気付いていました。
面倒見のいい乳母のフリをしながら、自分の思い通りに動くように怜子を誘導する。


子供ながらにそれに気づいていた怜子は、反抗するように全部ふきの思惑と逆のことをしてやったんだ!とぶちまける。思い通りにしない怜子にイラついた目をしても絶対に怒ったりボロは出さずに感情を押し殺し続けていたふきのことをずっと不審に気味悪く思っていた怜子は、「お前は一体なんなんだ!正体を見せろー!!!」と叫びますが、それでも「私は単なる家政婦です。。。。」と押し黙るふき。


あんた、まだシラを切るつもりか!とついに怜子は野口とのことをぶちまけます…


わたし、あんたの息子とヤッてやったんだ!!!!!
単なる庭師のあんたの息子と私がwwwwwwwww
あいつ、バカみたいに興奮して(自主規制)

またメス馬みたいに学の子作りに使われたすぐあとにあんたの息子の(自主規制)とお腹の中でシェイクしてやったんだ!!!!ぎゃーーーーはははははは!!!!!
産まれてくる子はどっちの子なのかなwwwww
ふきさん、ケイスケ(野口さん)の遺伝子が勝つといいねえ~~~!!あんたの孫だよおおおおwwwww







…………これ、おハナさまですよ??


おハナさまが……こ、こんな………


オイ、、くーみんいい加減に……



とも思いましたが、こんんんんんなエグイ台詞を叫んでも失われないおハナさまの品性よ!!!

自主規制にすら勝つおハナさまの気品!!!



くーみんvsおハナさま

は、おハナさまの勝利でした。完全に。





このとんでもない告白を聞かされたふきもついに理性を失い、思わず怜子の上にのしかかって怜子の腹を殴ります。

なぜこんなことをふきがしたのかって、あとで理由はわかります…



「痛いいいいいいいいいいいいい」

という悲鳴を聞いて我に返ったふきは、この可哀想な怜子をうしろから強く抱きしめます。
ふきに抱きしめられながら、怜子はいちばんの本音をこぼしはじめます。


「きっと………母親に……愛されなかったからね……」


跡継ぎを産むことしか期待されていない自分でも、せめて母親から愛されていればこんな風にはならなかったと怜子は分かっているんですね。

母からの愛が与えられなかったせいで怜子はこんなに狂ってしまったんだと知ったふきは、泣きながら怜子を抱きしめ続けます。「愛…してた……!愛してたのに…!!」と小さく呟きながら。

どうやら怜子の母がキーパーソンになっている様子。舞台には登場しませんけども。


「愛……?あなたの愛って…復讐なのぉ…?」


そう怜子に返され、ふきは脱力します。



そしてこの一部始終をルイはまた木陰で見てますからね……
どこまで二人の会話を理解しているのかはわかりませんけども。



「人間たちはぶつかり合ってとても汚い音を立てていた。僕はもう聞いていなかった。僕には…人間の声はもう届かなくなった…」


次々に大人たちの狂った様子を見て、聞きたくない言葉を聞かされ、ルイはもう完全に心を閉ざしていきます。




暗転。


野口にピンスポットが当たり、どうやら事情聴取に応えている様子だと分かります。

自分が保険証を持って庭に戻った時には、母が怜子をうしろから抱きしめていて、「今日はもう病院には行かないから」と告げられ、2人は一緒にお屋敷に戻って何かを話していた、と。


事情聴取を受けているということは、あのあとお屋敷で何かの事件が起きたということがわかりますね。

その事件がここから一気に描かれて行きます。




切られてしまった大好きなクロマツ。もうフクロウは来ないのかな…
ルイは大人たちが去った後にクロマツの切り株に泣きながら話しかけています。
そして夜になり、またそのままそこで寝てしまいます。
うとうとしていると聴こえてくるケイの声。


「その木…死んじゃったね…」

「来るなよう…」

「どうして??」

「ケイは…いないんだよう…」

「どうして…?」

「きーえーろおおおおお!!」

「いや!!!」

「だいっきらい!!!」

「わたしだってだいきっらい!!!」

「うううううどっか行けえええええええ!!!」



すると、聴こえてくるフクロウの鳴き声。
クロマツを探して旋回しているようです。

一緒に遊ぼうと声をかけるケイですが、クロマツがないことに気付いたフクロウはそのまま去っていってしまいます。


この庭のヌシだったクロマツが死んでしまった今、フクロウももう来てくれないし庭からは植物たちの声が何も聞こえなくなってしまった。
でもきっとフクロウは新しい居場所を求めて違う庭に向かってるはずだから、この高い高いセコイアの木に登ればその様子が見られるかも!と思った2人はセコイアの木にどんどん登ります。

以前、パパと「セコイアに登っていいのはここまで。約束だぞ?」と話したのに、フクロウに会いたくてすっかりその約束を忘れてしまっているルイ。




今度はふきが事情聴取を受けていて、その日のことを振り返って語ります。

ルイが部屋にいないことに気付いたふきは庭に出てルイを探しますが、まさかセコイアの木に登っていたとは気付けず、そのうちに庭の隅にある自分の家の戸が開いていることに気付きます。

閉めていったはずの戸がなぜ開いているのか不審に思って中に入ると……



「あの子が………娘が…倒れていました……」



え???娘???

ふきに娘なんていたの???


と観客は驚きます。野口さんの姉?妹??


「息をしていない娘と一緒に救急車に乗り込んだ時は…お坊ちゃまのことは考えませんでした……」


ルイを探していたはずなのに、思わぬ出来事にすっかり動転してルイがいなくなったことが頭から抜けてしまったそうな。


「あの子の遺書にあった内容はマスコミでは面白おかしく悪意を持って報道されましたが、私と克人さまの関係は不倫関係とかそんなことじゃありません。さだめに抗う復讐のようなもの…」


あの子って誰?
遺書?
克人さまとの関係??
不倫???
え?
え????


予想もしていなかったワードの頻出に耳を疑い続けていると、どうやら克人とふきは以前愛人関係にあったとのこと。

なんとそこでできてしまった子供が怜子だということでした…!!!!!!


つまり、ふきと怜子は親子。

つまり…野口と怜子は姉弟…



ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ



つまり、ふきが「あの子」「娘」と言っていたのは怜子のことだったんですね…
怜子はふきの家で自殺してしまったということでした。




克人はこの家に婿養子に入ったものの、肝心の子供ができない。
金持ちのお嬢様で傲慢で自信満々の妻は、子供ができないのは克人のせいだと吹聴していたようで、克人は妻のその態度に大変傷ついていた。

そんな妻はもちろん使用人たちにもかなり悪態をついていたらしく、傷つけられていた者同士である克人とふきが傷を舐め合うようになっていったのは自然の道理だったとふきは言います。


いつしかふきは妊娠し、当然ながら克人からは子供を処理するように言われますが、同志と思っていた克人にそんなことを言い渡され、ふきはここで復讐に出ます。

この子をこの家に差し上げます、と克人に無断で行動を起こします。
子供ができなかった主人夫婦の子供としてお育て下さい、と怜子を差し出しますが、勝手に子供を産んで勝手にこの家の子供として進呈したふきに克人は怒り、歳の頃もちょうどよかった庭師の野口に無理やり嫁がせてしまいます。


ふきとしては、自分のお腹に宿ったこの命を殺すことなんてできないという母性と、自分の遺伝子をこの家に送り込んで末裔まで繁栄させてやるんだ!!!という復讐と野心が詰まった決死の行動でした。


克人の妻が怜子を愛さないのは当然ですよね。
メイドなんていう身分の低い女との浮気でできた子供ですもんね。

でも、このことで不妊の原因は克人ではなかったことも証明され、自尊心も傷つけられたのでしょうから、その八つ当たり用サンドバッグとしても怜子を利用したのでしょう。


父は政治家で家にいない、母親は自分を憎んでいる、乳母のふきは自分のことを粘着質な目で見てくる。
そんな異様な大人たちに囲まれて育ち、望みもしない結婚を勝手にさせられ、「早く世継ぎを」と利用される身体。


普通に考えれば怜子があまりにも可哀想な境遇なんですが、大人たちは自分の野心や憎悪のことで頭がいっぱいで誰も怜子の本心になど目を向けていませんでした。



この辺はセリ美と完全に境遇がかぶりますので、ちょっと聞いていてしんどかったですね。

大人はなんだかんだと大義名分を掲げて自分の行動を正当化してなんとか自分を防衛できますが、防衛手段をまだ持たない小さな子を自分が守ってやらなければ、なんて思える大人はそうそういないと思いますね。

セリ美はそういう大人にだけは絶対にならない!!と心に誓ってますが。





ふきの事情聴取と同時進行で、セコイアの木に腰かけてお喋りしているルイとケイの会話が差し込まれます。



「ねえルイ…ルイはさ…どっか行くの?」

「うん……遠く。僕みたいな子供がいるところだって」

「あんたみたいな子っていんの~?(笑)」

「……いるのかなあ………」

「……あたしも行く!!」

「…っっ!!……(はにかむ)勝手にすれば…?」

「あれえええ~?(笑)」

「ふふ…どっちでもいいよ。ケイはいないんだし。人に見えないんだし」

「一緒に行こう!とお~くに行けたら、世界中の木とか花の話し声聞いてさ、それ一緒に音楽にしてさ、お金持ちになっちゃお~!」

「ばーーっかだな~ケイは(笑)……でも、、、ケイは僕なのかな……。よし!じゃあ登るぞ!」



ルイには、大人たちの声はもう聞こえない。自分の声も大人には届かない。
ケイがたとえ自分の頭の中だけにいる存在だとしても、こうして解り合える友達がいることに安心しているルイがあまりに無邪気でねえ…

こんなあまりに酷い環境に生まれ落ちてしまったのに「お金持ちになるんだ~!」とか笑いあってるルイとケイの純粋さがとても悲しかったです。



こう言っちゃなんですが、セリ美もだいぶ純粋なほうなので、大人たちからどんなに酷い目に遭わされてもそれでも「役に立たなくっちゃ!」って30歳くらいまでは必死に顔色伺って大人たちを喜ばせようと頑張ってました。

「大人が悪い」って真実に気付けなかったんですよね。
これは虐待児あるあるで、「自分がどうしようもない子だからみんなに迷惑かける」って洗脳されちゃってますからね。
その洗脳から一生抜け出せない人とかもいるので、時間はかかったけど自力で気付けただけ良かったんですけどね。


セリ美の両親はセリ美がこの世にスポーーーーン!と出てくる前に離婚していましたが、離婚することが決まって「ママと一緒に来る?パパがいい?」とか酷なこと訊かれてる子供ってきっと公園とかで友達同士でこういう会話してるんでしょうね。


「どっか遠くに行っちゃうの?」

「うん、そうみたい」

「パパとママ、どっちについてくの?」

「う~~~ん。。。みんな一緒がいい。。。」

「大丈夫!きっとまたみんなで一緒に暮らせる日が来るよ!」

「うん………」


みたいな。

な~~んにも悪いことなんてしてないのに、結局いちばん辛い思いをするのは子供でね。

大人って本当に罪深いです。


無免許運転みたいなことでね。
運転する講習も受けてないのに興味本位だけで人間を作っちゃってね。

親になるのにも試験とかあったらいいのに。


でもそしたら親免許持ってる人なんてめっちゃ少ないんだろうな。そしたら国家繁栄しないもんねえ。セリ美母なんて絶対合格しないから、そしたらセリ美もこの世に生まれてないしね。難しいよね。


怜子みたいに、最初は被害者だったのに次第に加害者になってしまう人もすごく多いしね。セリ美母然り。

「今の自分の選択は正しいのか?」って常にチェック体制でいられる人なんてすごく少ないもんね。その場しのぎの楽なほうに流されてしまう弱い生き物が人間ってやつですからね。





克人はなんとかして立身出世したい。そのために子供を作らないといけなかった。
ふきは自分の子供を使ってこの一族に自分のDNAを残すことで復讐したかった。
怜子は両親からの愛が欲しかった。
学は克人の期待に応えたかった。
野口は怜子を自分のものにしたかった。
ともえはお金が欲しかった。


その欲望のために犠牲になるかもしれない存在、傷つけてしまうかもしれない存在など目に入らない。それがたとえ我が子であっても。
それほど人間という生き物は弱いんですね。



復讐のために我が子を一族に送り込んだはずのふきなのに、いざ怜子が育ってくると母性がどんどん膨らみ始め、ふきが怜子を可愛がれば怜子ももちろん喜んでふきを慕います。
しかしその様子を見てまた克人の妻は腹を立てて怜子をいびる。


我が娘が目の前で虐待されているのを黙って見ていなければいけない状況に置かされ、復讐のつもりがかえって自分がどんどん追い詰められていき、母性を押し殺すために「使用人は感情を一切出さずに仕事に従事する」と意固地なほどになっていったふき。


自分が乳母として、家政婦として身を捧げれば捧げるほどこの一族が活躍し、自分の送り込んだ遺伝子がもっともっと繁栄していく。
使命というよりも執念とも言えるこの仕事に「私情を捨てて仕える」ことが復讐ともなり、自分の野心をも満たすことになりますが、それをすればするほど我が子である怜子は狂っていきました。

怜子がさっきふきに抱かれながら言っていた「あなたの愛って…復讐なの?」が、ここに繋がっているというわけですね。




こうして自分の人生について、秘密について、事情聴取を受けながら滔々と話し続けているふきですが、これはくーみん自身の思想なのかなあ?ふきの告白の最後に、とても印象的な台詞がありました。


「私は…たまの休みに隣の町にあるホテルの展望レストランに一人で出かけました。そこからは東京湾が見渡せ、鉄橋や埋め立て地、建設中のタワーやクレーンが見えました。まるで人間が…地球を侵略しているようでした。あのクレーンのところに、ここからは見えないほどの小さな人間たちが大勢働いていて、彼らが作り上げた大きなタワーや橋は、信じられないほど堂々と大きく重く、永遠に残るように思われるのに、その塵のような人間たちは人生のほとんどを費やしたあの鉄の塊よりも先に消えてしまう。誰からも記憶されることなく、まるでいなかったように……でも、克人様は学様は違います。街や国という大きなものを残していける。私の娘や孫たちもその大きなものと同等に生きていけるはずです!私は一家の存続と繁栄に執着していきました」



塵のような人間たちは人生のほとんどを費やしたあの鉄の塊よりも先に消えてしまう】


とても印象的でした。



SAPAも、地球を好きに侵略してついに壊してしまい、他の惑星に逃げてきた人間たちの話でしたね。
でもくーみんはそんな人間たちを別に醜いとも傲慢だとも批判するつもりはないと思うんです。
我々が今こうして気軽にムラに行ったり遠征できること、なんならミュージカルなんていう娯楽で人生を豊かにできることも、こういう産業、工業や科学の発展ありきのものですからね。

「自然との共生」なんて掲げてますが、何百年経ってもやっぱり戦争がやめられなくて、煩悩や欲に支配された我々人間が、どこまで地球の有機物たちとうまくやっていけるのか生き証人として興味深く観察している。くーみんは観察者のようなスタンスなのかな~と想像します。





セコイアの木に登れば登るほど遠い町の夜景が見えてきて、ルイとケイは大興奮。
そしていつしか夜が明け、朝日が差し込んできます。
葉に朝日が差し込んでくるその美しい景色に感動した2人は、「もっと!もっと地球の音が聴きたい!地球の音楽が聴きたい!」とどんどんどんどん登り、ついに2人を支えていた枝は折れ……!!


地面に落下していく中、植物たちの声が聴こえます。
「おいで~~」
気が付けばルイは真っ暗なところにいて、ケイもいない。
「だれか~~…こわいよう…だれか~~……」





建造物を実際に作っている人間を「どうせ自分が作ったものより長く生きられないのに」と蔑む一方で、その建造物の建築を指示している政治家たちは違うんだ!偉いんだ!と言うふきの思想は歪んでいますね。

そうして崇拝してきたこの家の主たちの仲間として自分の遺伝子を送り込み、自分も間接的に支配者になったような気がしていた、勘違いの傲慢さですね。


でも娘の自殺、孫の死亡事故を受けて、自分の遺伝子が途絶えてやっとここで気付きます。「私は間違えたああああああ」と、ふきは泣き崩れます。





真っ暗な暗闇で泣き続けるルイ。
怖さを紛らわせようと、手にしていたリコーダーであのメロディーを弱々しく奏でます。

すると、そのメロディーに合わせて歌う声が聴こえてきます。
気が付くと、目の前に盆栽、薔薇、リンドウ、セコイア、クロマツの芽、そしてクロマツがいました。


「もしかして…?」

「そうだよ」「そうだよ」「そうだよ」

「みんな~~~~!!!!言葉が喋れるようになったんだね!!!」

「いいえ。あなたが喋れるようになったのよ。私たちは変わらない」

「クロマツ~~!!切られちゃって、死んじゃったのかと思ってた!」

「私たちは死ぬとは言わない。変化するの。切り株になっただけ」

「ぼくは…死ぬの…?」

「いいえ。変化するの。私の子供と行きなさい」

「行こう!」(←おハナさま)

「君も…変化するところ?」

「君が僕の上に落ちてきて、ぺちゃんこになったよ(笑)」

「ごめえええええん!」

「あなたたちは雲より軽くなり、風に乗ってこの星を巡るの。さぁ、行きなさい。私の子供があなたと一緒に行きます。夜更かしの鳥の羽をくぐって挨拶してから行くといい」

「…よろしく」

「よろしく!」(←おハナさま)



こうしてルイはクロマツの芽と一緒に、お星さまになりました。


「夜更かしの鳥の羽をくぐって挨拶してから行くといい」
なんて、すごく絵本的な言い回しですよねえ。Eテレの「みんなのうた」に出てきそうな世界観です。
この場面のバックにすごく綺麗なピアノの音がずっと流れているのもとても幻想的でした。





時は過ぎ、母の電話に留守電を入れている野口の姿。
どうやらルイと怜子の事故の後、使用人たちもバラバラになり、野口も別の街で仕事を見つけたようです。結婚したい相手もいるとか。

ここで、野口なりの本音をようやく口にします。
自分が怜子のことをずっと想っていたことに、母さんは気付いていたよね?と告げます。
実の弟が姉を想ってしまっているという事実に気付きながらも、母として何のケアもしてくれなかったふきに野口は悲しみを抱えていたようです。

「母さんには姉さんが全てで、僕なんてどうでも良かったんだろ…?」

野口の引きつった笑顔の奥に憎悪のような感情も見え、古川さんはやっぱり巧いな~~と感心。


怜子が自分の姉だったと知ったのはいつのタイミングだったのか分かりませんが、ふきが愛する克人との子供である怜子を愛し、別に好きでもなかった先代の野口との子供である野口をさほど愛さなかったことは想像できます。


ふきはこのように、同じ我が子であるのに怜子を自殺へ追い込み、野口をも歪ませてしまった罪深い人です。

そんな母に野口は別れを告げるためにこの電話をかけていたのでした。


「さようなら…母さん」

そう言って電話を切ります。





怜子の自殺とルイの事故死はマスコミでも大きく報道され、せめてものイメージアップにと、学はこの家を解体して土地を寄付することにしました。
その解体工事現場を見つめている、ふき。


そこに現れる、一人の影。


「ばあちゃん!ケイだよ!」

「ケイ……?」

「ええ~(笑)ばあちゃんだいじょうぶ~?自分の孫じゃん!(笑)」

「あなたは…!お坊ちゃまのお友達…!」

「ばあちゃんの、ケイだよ」



なんと、ふきのところにもケイが現れますが、さっきまでのケイとは衣装が変わっています。
つまり、ルイの脳内にいたケイとは別人、ということ。

「ばあちゃんの、ケイだよ」と強調していますので、もしかしたら怜子のお腹に宿っていた、産まれてくるはずだった子なのかな、と想像しました。
怜子の子供ですので、ふきの孫ということになりますからね。



ケイはまたおもむろにリコーダーを取り出して、あのメロディーを奏でます。
でも、ルイが吹いていたメロディーとは少しだけ違います。

「それ……綺麗な曲ねえ」と目を細めながら聴いているふき。

そう言われてケイはとても満足そうに、嬉しそうに頷きます。

ケイが奏でたメロディーがどんどん壮大になり、2人が眺めている景色は工事現場からどんどん俯瞰になり、空を抜け、宇宙に到達し、地球の映像に変わって、緞帳。


はいお疲れ様でした~~~~!!!!!!







できるだけ忠実に説明してきたつもりですが、いかんせん天才の所業をセリ美ごときが文章で再現できるわけもありませんので、これだけ見ると昼ドラあたりにありそうな、血筋が絡んだ愛憎劇に見えますけども、重要なのは物語部分のそこじゃなくてね。

とにかく、一人二役。そこが斬新なんです。



麻実れいさんはクロマツとふきを演じていますが、どちらの役も「影のボス」です。
庭の木々たちに生命力を与えもしていますが、同時に支配もしている。
ふきも、一家の食べ物を作り子供を世話して生命力を与えていますが、実は自分の遺伝子を送り込んで一家を支配しようとしていた。



おハナさまはクロマツの芽と怜子を演じていますが、どちらも麻実さんの子供です。
ルイが落ちてきて一緒に空へ渡っていきますが、怜子とルイの死もほぼ同時です。
人間界では愛情の交流はできませんでしたが、お空に渡っていくときには2人手を繋いでいけるので、なんとなくそこで報われた感じがしますね。



成河(そんは)さん(東宝エリザでルキーニ経験もあるスゴイ役者さんです)はセコイアと学を演じていますが、どちらもルイを守ろうとして守り切れませんでした。



野添さんは盆栽と克人を演じていますが、盆栽は母であるクロマツから切り離されて人間のお屋敷で生きることになり、克人も養子として一人この屋敷に飛び込んできました。
克人は脚が悪く、杖をついていますが、盆栽は暴れる怜子に蹴られて枝を折られました。
克人への憎悪に任せて怜子が盆栽をめちゃくちゃに壊すあたりもリンクしてますよね。

でも盆栽は人間界で生きてきた歴のほうが長くなってしまっているので、他の植物たちとは少し毛色が違います。人間寄りの感情を持っていて、どんどんセコイアに登っていってしまうルイをなんとか助けようとしていたりします。
その辺も、憎悪にまみれる前の本来の克人はこういう人間だったのかな、と想像させますね。



安藤さんはリンドウとともえを演じていますが、ここはあんまり関係ないような?
古川さん演じる薔薇と野口も然り。



ともえと野口の2役リンクはさておき、その他の皆さんの2役リンクは非常に面白かったです、謎解きみたいで。

勘九郎さんがルイとケイの2役を演じたのはくーみんのプランではないので、そこのリンクはあんまり無いようで、中村勘九郎という役者の凄さ、演じ分けを楽しむための演出だったのかなと思います。




くーみんは「宝塚を辞めて起承転結から解放されたかった」と言ってますが、それでもものすごいドラマチックになってしまうのがくーみんのサガでしょうか。

くーみん初見の人だとついストーリー性に持って行かれて「昼ドラかよ!」って思うでしょうが、これは「ふきが怜子の母だったのか~!」とかじゃなくて、世界観を楽しむ作品であり、植物の関係性と人間の関係性をリンクさせてみるという面白い実験をしてみるというのがバイオームの主題なのかなと思っとります。




京大でウエクミ茶をしたときから、くーみんはずっと言っています。

「物語をアトラクション化させてはいけない!」と。
遊園地のアトラクションのように、「あ~楽しかった~」という感想だけで、物語を見る前と見た後で違う自分、みたいな影響のある作品が近年は少ない、と。


「私個人としては、物語を自分の中に取り込んで、意味を自分なりに構築して能動的に心動かすという見方をする」

と、この伝説のウエクミ茶で配られたレジュメに書かれていますが、きっとくーみんは、観た後に悶々と考え続けてしまう、純文学のような余韻の強い作品を目指しているのだろう思います。


まさにバイオームもそれで、「え、あれって…どういう意味なのかな」「あれってあそこと繋がるんだ!」「あれはあそこの伏線か!」とか、時間が経つにつれて判明することがポロポロ出てきて、ある意味ノイローゼみたいになります。

でも、くーみんワールドにどっぷり浸かっているそのノイローゼタイムがとても有意義に思え、「観劇ってこういうノイローゼタイムも含めて観劇だよね」と、なんだか得した感じ。



下北沢とかの小劇場で繰り広げられているような、本当にまったく意味の分からない抽象的な作品もありますが、バイオームはそもそもしっかりとした物語があるから純粋に起承転結も楽しめるし、それと同時進行している植物界と人間界の交わりみたいな世界観も楽しめるし、ミュージカルではなくストレートプレイではあるけど、リコーダーが奏でる音が植物界と繋がっていくという音の要素も入ってるので、とてもエンタメ性が強い作品だと思いますね。


魔のブリリアで生観劇してからしばらくは、あまりに強烈な内容にだいぶ動揺して混乱して、くーみんは人間を憎んでいる山岳信仰者なのか?とか、おハナさまになんちゅーことを…とか、親に愛されない可哀想な子という点であまりに自分と共通点が多かったりして、かなり精神をえぐられましたが、今となってみると「斬新なエンタメ!!!」という感想に落ち着きました。



もう今ごろくーみんはパリに着いているのでしょうか。それとも荷造り真っ最中なのでしょうか。
くーみんのことだからパリでものすごい量の知識を吸収して、感性を研ぎ澄ませまくり、1年後にはもはや別人になって奈良の山奥で陶芸とか始めちゃって山菜を生で食べたりお風呂は川で水浴びのみで捕まえた鹿の皮をなめしたものを身にまとって行方を追ってきたマスコミに水ぶっかけて追い返す感じの奇人になっちゃってるかもしれません。

そんな別人になる前の、まだ宝塚の演出法しか知らない、過渡期のくーみん作品はバイオームだけです。
上田久美子史を語る上で非常に重要な位置を占めるこの作品を生で観劇できたことをとても嬉しく思っています!


1年もくーみん作品が観られなくなるのはとてもとてもサミシイけど、次の天才女性演出家として栗田先生も頑張ってくださってることだし、くーみんと同世代のセリ美もまだまだ新しい挑戦を忘れたくないですね!!

ということで、また新たな宝塚関連の仕事に応募したので、またその辺もいつかご報告しますね!!







ああーーーーーーーー長いバイオームレポ、お疲れさまでした!!!
これ書くのに合計20時間くらいかかっちゃった!

ここまで到達された選ばれし皆さんもお疲れさまでした!!!


早く巡礼レポとカルトワインレポも書かにゃあ…

そうこうしてるうちに心中も始まっちゃうしね…



7月7日、毎年この日に星逢一夜を放送してくれてるスカステさん、ありがとう!
宝塚で書いてきた作品はくーみんにとっては商業的に作った初心者用なんでしょうけど、またあんな美しい物語を待ってます…




それではーーーーーーー








単に観劇予算が足りないから仕事増やしただけなんですけどね…貧乏暇なし