雪山で立派に心中してみせた可愛い息子、気が付けば清王国で2番目に勉強ができるエライ役人になってました。

心中前はスリして蕎麦打ってただけの子だったのに、今や妻子持ちのお役人さんだなんて…スター様になるってこういうことなのね…






おだわら





蒼穹の昴、先週行ってまいりました。

宝塚の書き仕事をしている悲しい職業病なんですが、ほとんどの作品は予習記事を書いてから観るので、特にこういう原作モノはネタバレしてから観ることになっちゃうんですよね。

ほんとはまっさらな状態で自分の目と感性で評価をしたいタイプなんですけど…仕方ないですね。


だから息子の行く末も知りながら観たので、「えっ!順桂!!!」という新鮮な気持ちで観られないのはサミシイ部分ではありました。




それでも、違う面での感動は大いにありました。


あの大きな大きな劇場で、舞台にただひとり立って全員の視線を浴びて堂々歌う息子…

フィナーレナンバーのトップバッター(歌唱指導)なんて、2番手様がやるお仕事だという印象なのでまさか息子がもうあんな立場になってしまったなんて…



心中の時もそうでしたが、毎度毎度「感・無・量!」、もうこの言葉しか出てきません。

もしかしたら、下級生から見守ってきている生徒さんを応援するファンがいちばん楽しい時期って3番手に昇進したあたりの今なのかもしれないですね。

セリ美の初恋の人、ミズさまにフォーリンラブした時にはミズさまは既に2番手様でしたから、研25で初めてこのような気分を味わわせてもらっています。




「まだ階段一人で降ろしてくれない!ムキィィィィ!!!」
「銀橋も一人で渡らせてくれないムキィィィィ!!!」
「団体芝居の一員しかやらせてもらえないムキィィィィ!!!」
「パレードで組長さんより内側に入れないムキィィィィ!!!」




gigigi





そんな季節を乗り越え、今こうして「まるでスターさんみたい!!!」といちいち感動できるシーズン到来、という感じです。



このご時世ですから、3番手羽根を背負おうが2番手を長く任されようが、トップの椅子は内定が出るまでまったく確約されないわけですが、トップになろうとなるまいとこれだけ「和希、すげえええええ!!」と世間様をどよめかせてくれているので、母はもう本当に誇りに思っています。



一言喋れば「あの人ええ声ーー!!!」とどよめき、ちょこっと歌えば「うっっっま!!」と驚かれ、軽くステップ踏めば「残像しか見えん!!」と激震が走り、正直言って息子は昨日今日急に巧くなったわけではなく、なんなら文化祭の時からずっっっっっっと巧かったんですが、その超人的技能が苦節13年、ようやく日の目を見たな…という想いが和希一派の総意ではないでしょうか。


それに加えて、研13だというのに少年性を残したフレッシュな青春感、黒目がちで照明を反射してキラキラ光るおめめ、日本人には大変珍しいまん丸な後頭部、取り皿くらいしかない小さなお顔、奈落で上級生に突然謎のクイズを出したりする愛され力。


ただ「技術力が高い」というだけではなく、イブラヒム、夢二、忠兵衛、順桂、という壮絶な悲劇役をことごとく演出家に託されるほどの、キラキラしたおめめの奥に潜む深い闇。




宝塚歌劇団さん、和希がいてくれて良かったね。
これで数年は安泰だよ。



そんな想いでここ最近、母は息子の舞台姿を見つめております。



巷で噂の歌唱指導も、「きたぁぁぁぁぁぁぁぁ!待ってました!ヨッ!和希!!」と心の中で大向こうを担当しながら、可愛い可愛い後頭部からの登場に「ヨッッ!原田くんよくやった!!」と大絶賛しておりました。


そのあとの男役群舞での大階段板付きスタンバイでもひときわ可愛い後頭部が目立っており、セリ美的には蒼穹の昴は「息子の後頭部を楽しむ作品」と言えそうです。



本編でもあのお帽子から出る三つ編みの可愛いこと可愛いこと。
宮殿に毎朝出仕する前に母さんが編んであげたいわぁ。

「自分でできるって言ってんだろ!」とか言われながら「まぁまぁそうカタいこと言いなさんな」とか言ってこっそりリボンなんか付けてあげちゃって職場でまりんさんあたりにからかわれて「あのクソババア!」とか職場で陰口言われたいですね。





三つ編み








息子の天才的な後頭部もさることながら、人間って普通、似合う髪色って決まってるんですよね。

巷でよく言う「パーソナルカラー」ってやつです。


セリ美は「秋」なんです。
ミズさまと同じなんですけどね!!!!!!!!


大まかに分けて、春と秋が「イエローベース」、夏と冬が「ブルーベース」で、簡単に見分けるコツは黒髪が似合うか茶髪が似合うか。

黒髪よりも茶髪が似合う人はイエローベース(通称イエベ)、茶髪よりも黒髪が似合う人はブルーベース(通称ブルベ)となります。


セリ美は見事に黒髪がまったく似合いません。
砂色みたいな黄色寄りの茶髪がいちばんしっくり来るかなあ。

で、似合う色はカーキとかカラシ色とかワインレッドとか煉瓦色とか、まさに秋っぽい色味です。
黒とか白は似合わないので(パステルカラーなんてもってのほか)、マスクもカーキ色を選んでいつもネットで買っています。



ジェンヌさんでも金髪がめっちゃ似合う人や、黒髪が抜群に似合う人、いろいろですよね。


それなのに!!!!
息子ときたら!!!!
金髪だろうが黒髪だろうが茶髪だろうがアッシュカラーだろうがなんでもござれなわけですよ!!!!





髪色遍歴

雑な切り貼りで申し訳なす…





順桂は他の登場人物と民族が違うみたいで、肌の色も今回結構白めにしてるんですね。
そこに漆黒の髪。

普通、金髪が似合うような人は黒髪はあんまり似合わないはずなんですよね。


この、「なんでも似合う」ってのももう才能ですよねえええええ



漆黒の髪にキラキラ真っ黒おめめ、そしてまんまる後頭部でしょ??


もう神に愛されし神童よね。





創造神








……もはや観劇レポではありませんね。


いいんですいいんです。

只々、息子を愛でているんですから。

雪組に関してのみ、作品の良し悪しは息子のオイシさと比例してるんですから。

蒼穹の昴での息子はルドルフみたいな立ち位置で、出番自体はそんなに無いけどとにかくオイシイ。

もうそれでオールオッケーです。




思い起こせば、ミズさま時代もそうだったなァ。

作品の良し悪しなんて考えたことも無かった。

とにかくミズさまが素敵かどうか。それだけです。

脚本の辻褄がどうとか、起承転結がどうとか、そんなことは1ミリも考えずに観ていました。


今と違ってヅカ友さんなど一人もおらず、一匹狼で家と職場と日比谷の往復に明け暮れていたあの日々。
とにかくミズさんが舞台に立っていらっしゃればそれで良くて、「ああ今日もお衣装がとてもよくお似合い」「今日も視線頂いちゃったわ…」「明日も2列か…うふふ」そんなことしか考えていませんでした。


当時から12年以上経って初めて「えっ?!『君を愛してる』って不評だったの?!」なんて知る始末です。



息子もたくさんの出番をもらう立場になり、「息子が可愛ければそれでいい」。ついにそのシーズンに突入したのかもしれないですね。

宝塚ライターとしては致命的ですが。







では一応宝塚ライターとしての意見も書いておきましょうか。



ん~~~まぁ原田くんって感じの作品ですね。特に1幕。

退屈退屈。

物語が全然進展しやしないよ。


いや進展はしてるんですけど、咲ちゃんとあーさが役人になる。その一言で終わるような内容を1時間以上かけてやるので、あれは一見さんはたぶん寝ちゃうんじゃないかなぁ……

そもそも名前も覚えにくいし、それぞれがどんなキャラクターなのか明確に描かないので「え?これ誰?」「この人はどっち派なの?」ってモヤモヤしたまま1幕が終わり、せっかくの京劇という見せ場も意外と地味でショーアップされていないので観客の集中力が持たないんですよねえ。


京劇ならではの振付とかとても大変だったと思うんです。

でもたった数人しか出てこないので
単純に迫力に欠けていて、せっかく頑張ってお稽古した京劇チームが可哀想でした。

もっとたくさんのアンサンブルを使って旗や剣を持って隊列を綺麗に見せて豪華に華々しくやれば良かったのに、本当にもったいない。



政治思想の違いゆえに分裂していく清王朝、というテーマなのだから、西太后と光諸帝のすれ違い、咲ちゃんとあーさのすれ違いなど、もっと輪郭をはっきり描けばみんな感情移入できたのに、西太后も別に悪役でもないし光諸帝も別に野心家でもないし、いちばんの悪役であろうまりんさんもどの辺が悪いのかよく分からないし、分裂が決定的になるはっちさん事件でも「え?何が起きたの?」ってよく分からないうちに緞帳下りてきちゃって悶々したまま幕間を過ごしたし、ドラマチックにさせる要素がいくらでもあるのによくもこんなに退屈にできたものだなあ、と感心してしまうほどでした。



なんつーのかなあ、伏線のばらまき方が致命的にへたくそ。

「どうなっちゃうのーー!!!」って思わせる手法がどこにも無い。



悪役をめちゃくちゃ悪くすることで他の善キャラが際立ったり、その悪役が失脚するときに観客は爽快感を味わえるわけじゃない?
物語を作る上で基本中の基本であるそういう手法がまったく使われていない。



例えば、西太后が政治のためとはいえ過去にどれだけあくどいことをしてきたか最初にしっかり描いておけば、西太后が「そろそろ私も引退を」と言い出した時に「ああ西太后も歳を取って価値観が変わってきたんだな」って観客は感情移入できるのにさ。



あーさが貧乏のどん底からどんな思いで這い上がってきたかもっとしっかり描けば、地獄を生き抜いてきたのになぜか決して失われないあーさの明るさ、歪まない実直さに救われる西太后や咲ちゃんの気持ちも観客は理解できるわけじゃないですか。


そこを描かずになぜかひたすら連呼される「ちょん切った」というすみれコードキーワード。
いや分かるよ?宦官ってどういう人種なのか説明したいのはわかるけど、1回言えば分かるっつーの!!!
何度も何度も、タカラジェンヌの口から「ちょん切った」「男の大事な部分」とか言わせんなよ原田の野郎。




唯一、息子の生き様がいちばん納得できるかな。
「母親の欲目だろうが!」って言われちゃうかもしれませんが。


でも順桂がどうしてああいう決断に至ったのか、そこだけはちゃんと伏線もありましたし、その決断に至るまでの感情の流れもなぜかすごく丁寧に描かれていました。

青空をバックに、銀橋で切なく歌い上げる心情、「もうこうするしかないんだ」と思い詰めていく心の動きと連動するように青空が夕焼けに変わっていく演出、夕焼けが夜の闇になる頃に覚悟を決めて怪しい洞窟に入り翻弄される様を表現した舞台セットと振付。


とてもとても丁寧に描かれていました。


その場面が2幕にあるだけで、1幕の退屈さが帳消しになってしまうほどの名場面だと母は思います。



ゆえに、1幕の退屈さと2幕の名場面がとても極端な作品、という印象でした。


あんな素晴らしい場面を担当できただけで、和希一派は「蒼穹バンザイ!」になってしまうわけですね。


「終わり良ければ総て良し」なので、劇後の感覚は悪くないです。
とにかく、あの1幕を耐えれば2幕は見どころ多いと思いますね。

フィナーレナンバーもとても素敵ですし。


男役群舞で黒いお扇子を使うんですが、それもすごく素敵でした。



原田くん、ショーやったら??

プロミセスの時のクリスマスパーティーの場面も可愛くて良かったですよ。


ああでも京劇のことを思うとちょっとなぁ……



これまでの原田作品を思えば蒼穹はあの2幕ですべてを挽回できるほどの魅力があるので、「いいほうの原田」と言ってもいいかな。


とにかく、1幕を耐え忍ぶこと。それが今後のセリ美の課題になりそうです。



でもほんとにもったいない。

京劇ももっといい演出にできたはずだし、西太后も光諸帝もまりんさんもはっちさんもかちゃさんもゆーちゃんさんももっとキャラを立たせることができるのに。


ゆーちゃんさんは完全に伊藤博文化していてめっちゃ千円札でした。そこは和みどころ。



日本人チームが何人かいますが、思い切って日本人は出さなくても良かったんじゃないかなあ。台詞に盛り込むくらいで。

そこよりももっと描くべき部分があったように思います。




もうね、いつも思っちゃう。


「これをくーみんがやったらどうなってたんだろう」って。


ベルばら、そろそろやりそうだという噂を耳にしますが、ベルばらだってもしくーみんがやったらどんなものになるんでしょうかね。

本当に本当に観たかった。



くーみんのロック魂に触発された若き演出家がもっとどんどん出てきてくれることを本当に願っています。最近は生田くんも失速気味だしさ……



若いショー作家も全然出てこないので、そろそろダイスケもネタ切れになるから早く若い子育ててよねー!とも思っています。



ああ、息子のショー観てないな……

次のダイスケショーが当たりでありますよーに……


あと半年もあるのか……長いな……







それでは今週は殉情を観てきまーす!!





来年4月には3番手羽根、見たいな………