万華鏡百景色の重篤なノイローゼにかかっているセリ美です、どうも。



このノイローゼぶりはBADDYやオギーのショーを観た時以来だろう。

万華鏡に使われている楽曲を毎日毎日エンドレスで聴きつづけ、自分で自分を洗脳しているような状況です。


オギーなきいま、くーみんなきいま、もう宝塚にセリ美の居場所は無いのかな…なんて思っていましたが、こりゃあまだまだお小遣い稼ぎが必要なようです。


詳細はもう少し自分の中で熟成させてからいずれ語ってみようかなと思っとります。





今宵はヅカネタではなくて恐縮なのですが、秋の夜長にぴったりなお話をひとつしてみようと思います。


と言いますのも、仕事のクライアントさん(33歳男性)に「セリ美は浅草出身なんです」と伝えたら素っ頓狂な声を出して「えええええええ?!?!」と言うので、「浅草好きなんですか?」と訊いたら、人生を変えるくらいのレベルでドハマりした小説があり、それが浅草の伝説のスリの話で、江戸っ子ってのはなんて粋でかっこいいんだ!!!と夢中になって泣きながら一気に読んでしまった、と。

以来、江戸っ子に憧れ続けている、と。


なんて小説なんですか?と訊いたら、浅田次郎の『天切り松 闇がたり』というシリーズだ、と。


浅田次郎と言えばつい最近雪組でもお世話になったり、宙組の『王妃の館』も雪組の『壬生義士伝』でもお世話になってますから、ヅカファンにとっては割と親近感のある作家ですね。

でも、どの公演もイマイチ「名作!」とは言えない仕上がりだったので、セリ美はどうしても浅田次郎にあまり好意的な感情を持っておりませんでしたが、セリ美の地元・浅草の話だってことですし、そのクライアントさんとも気が合うので、これはいっちょ読んでみるか、とメルカリで全巻一気買いしまして。


セリ美は小説嫌いで有名ですので、これはかなり珍しい行動です。
ライターやってるのに本読まないってとんでもないですよねえ。

読んでも哲学書とか歴史書とかの専門書ばかりなので、物語を文字で楽しむ、という行為は本当にほとんどしたことなくてねえ。



それで読み始めてみたら、さすが浅田次郎、スイスイ読めちゃう感じだし、なにより笑っちゃうほど地元しか出てこない。
地元の人間しか知らないような地名や位置関係が物語の舞台になっているので、なんか妙な臨場感があるというかリアリティーがあるというか。

「闇がたり」ということで、主人公である元泥棒の男が、留置場とか刑務所に忍び込んで、そこでボソボソと昔話を語るというシステムの物語になっております。


そこでの語り部ぶりが本当に見事で、「ああこれを小説家の妙技というのだな」と感心してしまいました。
生粋の江戸弁で、七五調のリズムで過去生きていた名人たちの武勇伝を語って聞かせるわけです。


セリ美の祖父もバリバリの江戸っ子でしたから、セリ美にとっては割と聞き慣れた口調(方言?)なんですね。


江戸弁っていうと東京下町以外の人たちにとっては「どういう口調のこと?」と思うようですが、落語みたいな口調のことです。

「するってぇと、どうだい!おめえ!とんでもねえ罰当たりモンがいたっていうじゃねえか!冗談じゃねえよ!」

みたいな感じの。決して品のいい言葉遣いではないですねえ。

でも残念ながらセリ美の口調もこれに近いものがあり、自分にも確実に江戸っ子DNAが流れていることを痛感しております。

「宵越しの金は持たねえ」とか、「己の信じた道をまっつぐに(まっすぐに)(これも江戸弁)進めば命なんて惜しくもねえ」みたいな潔い価値観をセリ美が持っていることもたぶん江戸っ子DNAによるものでしょう。


そういう、自分のルーツをとても実感できる小説でもあり、いま夢中になって読んでるわけですが。


『天切り松 闇がたり』の主人公が面白い昔話を若者に語って聞かせるように、自分が見聞きしてきた興味深い出来事をこうやって皆さんに披露するっていうのもまたオツなものかもしれないな、と思い、今日ちょうど過去の面白い出来事を思い出したので、さっそく語ってみようかなといういきさつです。






セリ美は愛知県が嫌いですが、いい喫茶店が多いところだけは好きです。
その代表格にコメダがありますね。確かにコメダもいいです。
コーヒーが美味しいというより、カフェメシの充実ぶりが素晴らしい。


コメダ以外にも、若い女性がキャッキャ喜ぶオサレ~で美味しいケーキ出してくれるカフェもあれば、おじいちゃんたちが朝早くにコーヒーチケットを持って新聞紙広げて静かに過ごしている渋い喫茶店もあれば、パソコン持ち込んで長々仕事しても申し訳ない気分にならない、放っといてくれる居心地のいいちょうどいいカフェもあり、そのときの目的に応じて本当にいろんな喫茶店を選ぶことができます。


セリ美が「お気に入り」としている喫茶店はたくさんあるんですが、その中でも「仕事するのにちょうどいい」カテゴリーに入る、静かな喫茶店にいたときのお話です。



入口近くの席でパソコンをカタカタやってたときに、Tシャツ&短パンというラフな恰好の小学4~5年生くらいの小太りの少年が「すみません…」と入店してきまして。


セリ美が仕事用に選んでいるような静かな喫茶店ですから、もちろん子供が一人で来るようなお店ではありません。
「道でも訊きに来たのかな?」と思っていたら、「あのう~~オレンジジュースっていくらですか?」とお店のおねえさんに訊いている。


すると、今度はずいぶんとオシャレをした可愛い女の子が入店してきた。
歳の頃は小学1~2年生くらい。
綺麗に編んだ三つ編みにピンクのリボンをして、フリフリのワンピースに、かわいいポシェットを掛けてる感じの。


こんな愛知の片田舎で(周囲は田んぼ)どうしてこんなオシャレな恰好を?と思ってしまうほど、すごく可愛いお洋服を着ていた。

その女の子は、さっき入店してきた小デブの男の子のことを見ている。




小デブの男の子の質問に、お店のおねえさんはちゃんとしゃがんで目線を合わせて、「オレンジジュース?500円だけど…お金足りる?いくら持ってるの?」と訊く。

「200えん……」

と小デブ少年は残念そうに答える。


おねえさんはどうするのかなと思っていたら、「そしたら、あそこにコンビニ見える?あそこなら200円でオレンジジュースが買えるから、そこに行ってみたらどうかな?」と優しく答える。


もうその時点でセリ美は「やっぱりここはええ店や……」と胸が温かくなっていた。



しかし、少年は「う~~ん…」と悩ましげな表情。


すると、おねえさんはうしろにいた女の子に気が付く。

「あれ?きょうだい??」と訊くと、男の子は頷く。

おねえさんが「2人で来たの?」と訊くと、「はい。あのう……お手洗いってお借りできますか……?」と小デブ少年はとても言いづらそうにおねえさんにつぶやく。


おねえさんはようやくこのきょうだいの事情を察したようで、「あ!お手洗い借りるためにオレンジジュース注文しなきゃって思ったのか!そんなの全然いいよ~!どうぞ使って使って!」と笑顔できょうだいをトイレに案内する。


小デブ少年は、妹を促しておねえさんと一緒にトイレに行かせた。












………もうセリ美、泣いてたよね。




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あの小デブ少年は、トイレに行きたくなっちゃった妹のために、なけなしのお小遣いを使って綺麗な喫茶店のトイレを借りようとしてたこととか、「トイレだけ借りるなんて申し訳ないから」という信じられないほど謙虚な気持ちを持っていたこととか、自分なんてTシャツ&短パンでいいけど妹にはオシャレな恰好でお出かけさせてあげたいと思っていたであろうこととか、もうあまりにもお兄ちゃんが健気で、小学生なのに驚くほどの常識人だったりしたことが「日本の未来は安泰じゃあああああああ」とセリ美を泣かせました。


小学校中学年~高学年なんてみんな友達と集まってゲームしたり馬鹿ないたずらばっかり覚えたりして大暴れしてるときなのに、あの子は自分が連れて行ってあげられる範囲の近所で、「オシャレしてお出かけしたい」という小さな妹の願いを叶えてあげてたんだ、と思うとね……


そしてお兄ちゃんは出先でトイレに行きたくなっちゃったときの想定なんてしていないから、妹に「トイレ行きたい」と言われてかなり焦ったんだろうね…

ショッピングモールとかなら良かったのに、田んぼに囲まれた、ガソリンスタンドや土木事務所くらいしかないこんな道端で、「トイレってどこにあるの……?」と思った時に綺麗な喫茶店が見えたけど、何も注文しないのにトイレだけ借りることなんでできない、とお財布の中を見て、オレンジジュースって200円で注文できるのかな…って思って、妹を「ちょっと待ってな」って外で待たせてお店の人にオレンジジュースの値段を訊きに行くなんて……



一体どんな教育をしたらこんな優しい子に育つのでしょうか。




トイレから戻ってきたらこのきょうだいをセリ美のテーブルに呼んで「好きなもの注文しな!おばちゃんのおごりだから!でもママには内緒だよ?」とかって言ってあげたかったけど、このご時世、勝手なことをしても良くないのだろうと思って、気付かなかった振りをして、この健気なきょうだいを見送りました。


もちろん、おねえさんにしっかり「ありがとうございました!」と元気にお礼を言って2人は店を出ていきました。

この少年の事情にいちはやく気付いてあげたおねえさんも本当にグッジョブでした。





他にも、


卵自販機

豆腐メンタル

こんな出来事もあったりね。


このときも、もちろん少年も偉かったんですが、この少年が登場する前に先客がいましてね。

坊主のオニイチャンで、作務衣みたいなのを着てて、でもヒゲ面だしアクセサリーとかもゴツくて、ボディーピアスとか開けてる感じで。
「え~と……カタギの仕事ではないですよね…?怪しい草とか錠剤とか売っちゃってる?」という怖い感じの人で、セリ美は「うわ~関わりたくない…早く卵買って出よう」と思っていたのに、自販機にお金を入れても全然お金が入っていかなくて、「あれ?あれ?」と焦っていたらその怖いオニイチャンが「お金入っていかないすよね?」と話しかけてきた。

でもその話し方が全然怖い感じではなく、「あ、全然大丈夫だ」と思い、2人で「ここ(養鶏場の電話番号)に電話してみます…?」とか話し合いながらやってたんですわ。


そこに登場したのがこの豆腐メンタル少年でね。

そこまでのいきさつを説明して「え…?あ、ああ、はい…」と戸惑いながらもしっかり「ありがとうございました。」と言って帰れるその常識、冷静さ。
きみは全然豆腐メンタルなんかじゃないぞ!安心しろ!!このババアが保証する!!




坊主2人に挟まれながら、「坊主ってのは悪い人間じゃないんだな」ということを学んだ出来事でした。




セリ美は母や兄にいじめ抜かれて生きてきたので根底にあるのは深い人間不信なんですが、愛知にやってきてたまにこういう出来事に遭遇し、「田舎も悪くないな」と思えるようになりました。

いい喫茶店多いしね。



他にも、



背もたれ

こんな出来事もありましたね。

大阪→名古屋行きのバスだったので、愛知県在住の男の子だったのだろうと思う。



都会の子は今どんな感じなのか分からないけど、セリ美が「愛知県民、キライだわ~~」と思っている中でもこうして日本の未来を安心して託せる若人に何度か出会えているのは、本当に希望の光だと思う。

この子らが働き盛りの大人になる頃に日本は、地球は、一体どうなってしまっているのか分からないけど、SDGsの目的ってきっとそういうことなんだろうと思う。

こんないい子たちが楽しく不安なく、生き生き働けるような環境を我々働き盛り世代が残してあげないといかんよね。




醜い根性を持った人も出来事も少なくないけど、そうじゃないこともこうしてある。


悪いほうに引っ張られないように、自分の信じた道をまっつぐ生き抜いていきてえもんだな!お天道様に顔向けできねえような生き方はしちゃあなんねえ。てめえのケツはてめえで拭いて、ほんの少しでも人様のお役に立てるよう、今日も浅草の観音様に手を合わせてひと仕事だ!てやんでえこんちきしょう!!!






そこまでコテコテの江戸弁の使い手は現代にはもういないだろうな~。


それじゃあごめんなすってよ!!!










でも今や浅草も中国人に土地をどんどん買い占められちゃってねえ…
これも時代の流れだわね……